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伝統文化とエンターテイメント ~ガルパ・対バンイベント「二人三脚のすゝめ」より~

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今回のバンドリのイベントでは、生け花の展示に関して互いに異なる考えを持つ透子と蘭が、いかにして上手くすり合わせをしていくかという展開に焦点が当てられていた。 「生け花に興味が無い人にも見てもらえるように、服や演出を派手にしたい」と考える透子。 一方で、「花を生ける時の厳かな空気を、生け花の魅力として大事にしたい」と考える蘭。  最初は双方の考えがぶつかってしまうが、やがて互いの真意を理解し、イヴ曰く「気軽さはあるのに、決して浮ついていない。 まさしく、完璧なコーナー」を作り上げていくその様に、伝統文化とエンターテイメントの融合における難しさと素晴らしさを感じることが出来る。  伝統文化とエンターテイメントは、反発し合う対比構造として語られることも多い。  伝統文化が持つ保守性や荘厳さを重視し過ぎてしまうと、興味の無い者に古臭さや敷居の高さを感じさせてしまい、ますますその伝統文化から遠ざけてしまうこともある。 反対に、エンターテイメント性を重視し過ぎてしまうと、伝統文化独特の美しさや力強さなどを損ねてしまい、その本来の良さが見えなくなると同時に本質を歪めてしまう恐れがある。 現実でも、伝統文化とエンターテイメントの融合は大変難しい課題となっている。 近年では日本国内における多くの伝統文化が、後継者不足の解消やPRを目的としてエンターテイメントとの融合を模索している。 しかし、前述の通りその道は険しく、思うように効果が出ないケースも存在する。 一方、そんな中で伝統文化とエンターテイメントの融合に成功している例もある。古武術流派の1つである「天心流兵法」は、古くから伝えられている武術の形や技法をアレンジし、尺八やジャンベの演奏とコラボレーションすることで、エンターテイメント性の高い演武を披露している。 https://www.youtube.com/watch?reload=9&v=sRSAkjk9Vxw 試行錯誤が繰り返されることで、こうした伝統文化とエンターテイメントの融合は今後も増えていくだろう。 そして、それは伝統文化の継承に繋がると同時に、新たなエンターテイメントの誕生によって我々の心が満たされることとなるかもしれない。

天心流「滝流」と柳生制剛流「瀧流」

天心流の滝流(たきながし)は、柳生宗厳(石舟斎)の弟である柳生重厳(松吟庵)が考案したとされている技で、柳生制剛流(及び新陰流居合)では「瀧流」として伝えられている形である。 http://tenshinryu.blog.fc2.com/blog-entry-41.html?sp 元々、制剛流には瀧流という技は存在しなかった。 しかし、制剛流に柳生新陰流の理合いを加えて再編成された柳生制剛流には、截合の1本目として瀧流が追加され、新陰流居合にも瀧流は継承された。  制剛流居合の伝書 https://twitter.com/6858ichikawa/status/957587260198678528 柳生制剛流抜刀術の相伝書 https://www.youtube.com/watch?v=rb1rGCrvPOs そして、同じく柳生新陰流の影響を受けた天心流にもこの形が見られることから、滝流及び瀧流は伝承通り柳生家によって生み出された技であるといえる。 どちらの形も、正座している時に頭上から斬りかかってきた敵に対し、右膝を引いて抜刀しながら切っ先を突き上げ、続けて斬りつけるという基本的な術理は完全に一致している。 細かな動きについては両流派に違いがあるものの、同じ流派であっても伝系によって若干動きが違うことはよくあるので、基本的な術理が一致している時点で同じ技であることに間違いはないだろう。 天心流の滝流 https://twitter.com/tenshinryu/status/974080248349212672 新陰流居合の瀧流 https://www.facebook.com/shinkageryuheihou/videos/%E7%80%A7%E6%B5%81/704233053052451/ https://www.youtube.com/watch?v=QcJbvYSyVPg

日南葵はなぜ嫌われるのか ~「弱キャラ友崎くん」第1話より~

「弱キャラ友崎くん」のアニメ第1話をニコニコ動画で視聴していると目に付くのは、ヒロインに対するヘイト的なコメントである。 特に、主人公の友崎文也と口論する場面ではそれが顕著で、むしろ視聴者が文也に感情移入し、同情するようなコメントも多く見られる。 なぜ、葵は視聴者に嫌われるのか。 そもそも我々視聴者は、この作品で定義付けられている「リア充」的な生き方に微塵も興味が無い。 それは、我々が既にリア充とは違った幸福な人生観を既に見つけているからであり、リア充になる必要が無いからである。 故に、文也に対して「うだつのあがらないやつ」「ゴミみたいな人間」と辛辣な言葉をぶつける葵は、我々視聴者からすると排他的なリア充至上主義者に見えてしまい、最悪な印象を抱いてしまうのである。 実際、葵は「リア充以外の生き方はナンセンス」という旨の発言が多いので、自分とは違う人生観を持つ他者に対して大変失礼な言動をしてるといえる。 果たして葵の言う通り、リア充以外の生き方はうだつの上がらないゴミのような人生なのだろうか。 断じてそんなことは無い。 友人やパートナーとの関係に悩んだ挙げ句不幸な人生を送る羽目になってしまう者は古今東西に存在するし、逆にパートナーや友人を作らずとも幸福な人生を送る者達もまた多く存在する。 事実、原作者の屋久ユウキ氏ですら「当然“リア充”だけが正解では絶対ない」とツイッターで述べている。 https://twitter.com/Yaku_yuki/status/1347832845834731520 本心からリア充になりたくて努力をするのは勝手かもしれないが、誰でもリア充になれば幸福になれる訳ではない。 例えば、私の価値観を基準とすると、葵の人生は決して幸福とは言えないし、幸福になるための努力も出来ていない。 なぜなら、葵は武術の鍛練や歴史学の研究など、私の人生において最優先にするべき努力を全くしていないからである。 私の価値基準において、成すべきことを成せないくせに勉強や部活などの高校生活を呑気に満喫し、プロゲーマーを目指すわけでもないのにゲームにかまけて貴重な時間を浪費するなど、それこそ「ゴミみたいな人間」の人生である。他者が葵のような人生を送るなら良いが、私自身はそのようなリア充人生を送りたいとは決して思わない。 しかし葵がそのような人生を送っているからといって

全国武徳祭の招待演武団体

近年、一般社団法人・大日本武徳会は、毎年開催している「全国武徳祭」に外部の武道・武術団体を「招待演武団体」として招いている。 武道の聖地である京都市・旧武徳殿で演武出来るとあって、招待された演武団体にとっては大変名誉なことであり、マスメディアから注目されることもあるようだ。 https://mainichi.jp/articles/20190628/ddl/k24/040/249000c 大日本武徳会が外部の武道団体を招待し始めたのは、2018年4月29日に開催された第56回全国武徳祭からである。 具体的にどのような演武団体を招待するかについては、「大日本武徳会会報 2017年10月発行 秋季号」に次のように説明されている。 「このような厳しい時期であるからこそ想像力豊かな対策を講じる必要がありますので、来年度の全国武徳祭には、各地から厳選された招待演武者を招聘したいと考えています。その為の適切な調査やリサーチを進めると同時に、全国で活躍されている武道家で、武徳の理念に共鳴される先生方を中心に啓蒙活動をしていきます。」 http://butokukai-honbu.org/kaihou/pdf/201710.pdf つまり、全国武徳祭の招待演武団体とは、適切な調査を元に大日本武徳会から「全国で活躍していて、武徳の理念に共鳴する武道家である」と認められた演武者なのである。 なお、2019年4月29日に開催された第57回全国武徳祭には、以下の14団体が招待演武団体として招かれ、演武後はそれぞれの団体に「招待団体特別賞」が授与された。 薬丸自顕流顕彰会(鹿児島県) 宇治居合道研究会 登龍館(京都府) 沖縄剛柔流空手道協会 順栄館 止観道場(滋賀県) 全日本伝統居合道連盟 無双直伝英信流 明心館道場(大阪府) 新陰流兵法 碧燕会(三重県) 西国柳生新影流兵法 錬心館(福岡県) 修心流居合術兵法 修心館(兵庫県) 天心流兵法(東京都) 柳生心眼流體術(栃木県) 大日本敬天社道場 総本部 荒木無人斎流居合道(兵庫県) 柳生新陰流兵法 志道館(岐阜県) 関西大学体育会 古武道部(大阪府) 立命館大学体育会 古武道部(大阪府) 金沢工業大学 正伝長尾流體術(石川県) 大日本武徳会公認 弓刀錬心舘道場 https://www.facebook.com/kyutorenshinkan/