兵器の保持と侵略意思

2022年12月7日、朝日新聞の夕刊に以下のコラムが掲載された。




上記は、昨今において議論の的となっているトマホークミサイルの保持や、敵基地攻撃能力に対する意見と思われる。

しかし、強力な兵器を保有することは、必ずしも先制攻撃能力を持つことに繋がる訳ではない。

何故なら、例え強力な攻撃兵器を保有していたとしても、時の政権に他国を侵略する意思が無ければ、先制攻撃やそれに伴う侵略戦争も起こらないからである。

より簡単に言えば、兵器が人を殺すのでは無く人が人を殺すのである。

そもそも、現在の自衛隊はトマホークを保有していないとはいえ、その気になれば現状の戦力であっても他国へ先制攻撃を仕掛けることは十分可能である。

無論、自衛隊はアメリカ軍や中国人民解放軍ほどの先制攻撃能力は持っていないが、軍隊並みに多彩な兵器を保有していることは誰しもが知っており、他国の軍隊に侵攻された際に迎撃が出来るということは、少なからず敵兵を殺し、敵兵器を破壊するほどの実力は既に備えているということである。

実際、陸上自衛隊・水陸機動団は、有事における離島奪還を目的とした上陸訓練を行っており、他国の軍隊で言うところの「海兵隊」と同じ作戦遂行能力を有している。


水陸機動団の上陸訓練
https://www.youtube.com/watch?v=i14TnmC6ZGQ



従って、水陸機動団が航空自衛隊や海上自衛隊の支援を受けながら、他国の領土への上陸作戦を遂行すれば、それは侵略戦争の足掛かりたる先制攻撃となる。

しかし、そのレベルの先制攻撃能力を既に持っているにも関わらず、日本の自衛隊が他国へ侵攻しない理由は、過去から現在に至るまで歴代の政権がそれを望まなかったからである。

逆に言えば、例え大した先制攻撃能力を持っていないとしても、時の政権が他国への侵攻を望めば今すぐにでもそれは実現出来る。

事実、ロシア軍は最新兵器が全軍に行き渡っておらず、それどころか未だに1980年代式の古い兵器を使っている部隊すらあるほどで、アメリカ軍のような高い先制攻撃能力は持っていないが、プーチン大統領の一声によってウクライナへの侵攻を実現している。

つまり、もしプーチン大統領のような強権的で野心のある者が日本の首相になってしまうと、その独裁がエスカレートした結果として憲法を含めた諸法も瞬く間に改正され、現在の自衛隊が他国へ侵攻することもあり得る話となる。

しかし、戦後日本の歴代首相はプーチン大統領と比べれば皆穏健派で平和的な人物ばかりなので、運良く日本は侵略国家とならずに済んでいるだけの話なのである。

結局のところ、いつの時代も戦争を起こすのは兵器ではなく「人の心」である。

強力な兵器を保有しているから国家が戦争を起こすのではなく、むしろ例え大した先制攻撃能力を持っていなかったとしても、時の政権を担う首相や大統領が他国への侵攻を望めば、後の結果はどうあれ侵略戦争は簡単に起こってしまうのである。

少林寺拳法には「人、人、人、全ては人の質にある」という教えがあり、法や政治のあり方はイデオロギーや宗教の違い、国の方針のみによって決まるのではなく、その立場に立つ人間の人格や考え方に左右されるため、真の平和の達成には慈悲心と勇気、強い正義感を持つ人間を1人でも多く増やすことが必要であると教えられる。

また、アメリカ海兵隊マーシャルアーツプログラム(MCMAP)にも「One mind, any weapon」という標語があり、戦いの勝敗を真に決定付けるのは、手にした武器の優劣ではなく、戦いに挑む兵士の戦意であると教えられる。

つまり、例え大した武器がその場に無くとも、戦意を失わずに創意工夫すれば敵と戦うことが出来るという、戦いの本質が兵器に拠るのではなく人の心に拠ることを表しており、逆を言えばどれだけ強い兵器を所持していようと、戦意が無ければ争いは起こらないということでもある。

日本の古武術においても、「争いを求めることは兵法の道ではない」と教える流派が多く存在する。

日本の古武術では様々な武器術を学び、敵を殺める術を体に覚えさせていくが、決して自ら進んで争いを求めてはならないと教えられる。

その理由は、例え強力な兵器を保有し、その使い方を身に付けているとしても、争いを求めない心を持つことで少しでも戦いを回避する確率を上げられるということを、先人達が知っていたからである。

今後我々が国内政治において最も注力すべきことは、単にトマホークを保有することや敵基地攻撃能力の是非を問うことではなく、プーチン大統領のような他国への侵略意思に満ちた人間を首相にさせないことである。

例え、トマホークや敵基地攻撃能力を持たないとしても、他国への侵略意思に満ちた人間が首相になれば、最悪の未来を免れることは出来ないであろう。

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