天心流「蛸の壷抜け」

「蛸の壷抜け」は天心流における秘太刀(隠太刀)であり、無刀取に対する返し技である。


蛸の壷抜け(諱名:根腐太刀)
https://twitter.com/tenshinryu/status/840767733172072448


天心流の伝承によると、無刀取りの返し技を開発したのは柳生宗矩である。

加えて天心流の技法は、宗矩が編み出した江戸柳生新陰流を元に流祖・時沢弥兵衛が整理・再編したものであるため、無刀取りの返し技は弥兵衛を含めた歴代継承者によって徐々にブラッシュアップされ、今日に至っていると考えられる。

何故、無刀取りの返し技を考案する必要があったのか。

その理由は無論、柳生新陰流が仮想敵だからである。

例として、同じく新陰流から派生したタイ捨流の流祖である丸目蔵人は、柳生新陰流や示現流に如何にして勝つかを工夫したと言われている。


タイ捨流剣術とは
http://taisharyu-kenzhutsu.net/about-taisharyu-kenjutsu


つまり、例え新陰流系だとしても、袂を分かった時点で同じ新陰流系の他流派は仮想敵であるため、柳生新陰流の奥義である無刀取りに対抗する技が開発されたとしても不思議ではない。

新陰流から袂を分かって天心流が創始されたことで、仮想敵となった柳生新陰流の無刀取りに対抗する技法を編み出す必要性が出たのである。

とはいえ、江戸柳生新陰流は徳川幕府の御流儀でもあるので、同じ幕府方の流派である天心流が江戸柳生新陰流の修業者と対戦する可能性は低いと考える者もいるだろう。

しかし、当時は既に江戸柳生新陰流も広く一般に普及していたため、幕府に仇なす者達でも江戸柳生新陰流を修業することは出来た上、修業段階が進めば当然無刀取りの習得も可能であった。

そういった江戸柳生新陰流に熟達した敵を相手にする際に、天心流は無刀取りの返し技を有効に活用出来るのである。

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