イタリアの対ナイフ用護身術

1613年にイタリアで発行された護身術の教則本には、短剣を持った相手に対する捨て身の投げ技が紹介されている。


イタリア式護身術
https://twitter.com/baritsu/status/1673984645455814656


現代では、海外の警察官がブラジリアン柔術のテクニックを応用した類似の技を指導しており、薬物中毒者の暴漢に拳銃弾を食らわせても無力化出来なかった場合を想定してトレーニングが行われている。


ブラジリアン柔術の応用技
https://twitter.com/Schwarzekatze02/status/1674003999559913472


上記ツイートの動画の最後には、実際に警察官が暴漢相手に路上で技を使用している映像も含まれており、実戦で使える技であることが証明されている。

これに対し、SSRセルフディフェンスの河合主水先生は「実戦では使えない」とツイートし、コロンビアで起きた傷害事件の動画を紹介しているが、そもそも河合先生が紹介している動画は件のイタリア式護身術とは若干想定が異なっており、同じ土俵に立たせて比較すること自体が誤りと言える。


河合主水先生のツイート
https://twitter.com/ssrmondo/status/1675063225011019776


河合先生がツイートで紹介されている動画では、ナイフを持った暴漢と被害者が既に近距離で対峙しており、この状況に陥っている時点で被害者が猪木アリ状態になることが危険であるということは、確かに河合先生のおっしゃる通りである。

しかし、件のイタリア式護身術は、上述におけるブラジリアン柔術の応用技と同じく、暴漢が遠距離から全速力で突進しながら間合いを詰めてきた時を想定していると思われる。

そのため、イタリア式護身術はブラジリアン柔術の応用技と同じく、相手が全速力で間合いを詰めてきた瞬間に、その勢いを利用しながら捨身で投げ飛ばす技であると考えられ、厳密に言えば河合先生が紹介されている動画内容のような猪木アリ状態ではなく、柔道の巴投げのように一瞬のタイミングを見極めて繰り出す捨身技であると推定出来る。


河合先生がツイートで紹介されている動画
https://www.kaotic.com/video/4294cc4d_20230612112413_t


武道・武術・格闘技の経験がある者であれば誰でも知っていると思うが、捨身の投げ技と猪木アリ状態は全く別物の戦術であり、同列で語るべきものではない。

猪木アリ状態は、立っている敵に対してあえて寝転がる姿勢をとることで、敵を寝技に引き込むことを狙ったり、オープンガードによって敵が打撃技を繰り出しづらくなるよう仕向ける戦術である。

これに対して捨身の投げ技は、主に相手が攻撃などに伴って前進してくる勢いを利用し、さらにそのタイミングで自らが倒れ込む勢いも合わせて合気をかけることで相手を投げる技である。

故に、猪木アリ状態と捨身の投げ技は似て非なるものであり、比較して論評することは誤りである。

仮にも護身術を指導する立場であるならば、河合先生はまず格闘技の基本知識として猪木アリ状態と捨身の投げ技の違いを一から学び直し、その誤った認識を捨て去るべきだろう。

コメント

このブログの人気の投稿

天心流と新陰流の共通技法

天心流「虹の太刀架け」

天心流の居合刀